インプラントは「第二の永久歯」とも呼ばれるほど見た目が自然で美しく、自分の歯と同じようにしっかり噛むことができます。毎日取り外してケアする必要はありませんし、人工物ですから虫歯になるリスクもありません。いいことばかりのように思えるインプラント治療ですが、デメリットやリスクはないのでしょうか?
インプラントにはどんなデメリットがある?
インプラントについてよく言われるデメリットの一つは、外科手術が必要になることです。顎の骨に人工歯根を埋め込むための手術は避けることができません。その他、他の治療に比べ治療期間が長くなることや、保険がきかないため治療費が比較的高額になることなどもデメリットだと言えるでしょう。
インプラントと天然歯は何が違う?
「インプラントは本物の歯と変わらない」と言われることもありますが、天然歯にはある“何か”がインプラントにはありません。それが、「歯根膜(しこんまく)」です。私たちの歯は顎の骨に支えられていますが、直接骨に接しているわけではなく、歯根膜という0.2mm程度の膜を介して接しています。そして、天然歯を失うと同時に歯根膜も失われます。歯根膜がある天然歯と、歯根膜がないインプラント――歯根膜の有無によってどんな違いが出てくるのかを解説していきましょう。
インプラントはクッションがない!?
歯根膜は、噛み合わせの力を逃がすクッションの役割を果たしています。歯根膜があるおかげで歯に加わる過剰な力が和らぎ、顎の骨や歯にダメージが及ばないようになっているのです。一方、インプラントには歯根膜がなく、顎の骨とインプラントが直接くっついているためダイレクトに力が加わります。そのため、噛み合わせに問題がある場合や歯ぎしりのクセがある場合などは、顎の骨やインプラントに負担がかかり、後のちトラブルの原因になってしまうことがあります。
ちなみに、私たちの歯は噛んだり力を加えたりすると歯根膜のクッション効果によって動きます(生理的動揺)。天然歯は力が加わると、健康な状態でも衝撃吸収のためわずかに動くということですね。一方、インプラントには歯根膜がありませんので、力が加わっても動くことはありません。
インプラント治療を受けるなら、このような「天然歯とインプラントの違い」をよく理解していて、歯ぎしり等がある場合にも適切な対応をしてくれる歯科医院を選ぶことが大切ですね。
インプラントは血液が補給されない!?
歯根膜は、周囲の組織に血液を供給し、栄養を補給する役割を果たしています。インプラントは歯根膜がないために、血液から栄養の供給を受けにくいという弱点があります。感染に対する防御力・抵抗力が天然歯よりも弱いため、特にインプラントの歯周病「インプラント周囲炎」には注意をしなければいけません。
院長より
インプラントは日進月歩で進化しており、「天然歯と遜色ない」と考えている方も多いかもしれませんが、やはりインプラントが天然歯を上回ることはありません。たしかに優れた治療法ですが、上述のとおり歯根膜がないがゆえのリスクを併せ持っているのも事実です。まずは、知識・経験が豊富なドクターのもとで治療を受けることが大切です。そして、治療が終わった後も適切なホームケアを行い、定期的にメンテナンスを受けるようにしましょう。そうすれば、トラブルなく長きにわたってインプラントを維持していけるはずです。